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漢字は難しいか?(1)漢字の多画性

漢字は難しいか?(2)漢字の多字性

漢字は難しいか?(3)漢字の多字性・続

漢字は難しいか?(4)日中漢字数比較

漢字は難しいか?(5)英単語との比較


5.漢字は難しいか?(5) 英単語との比較 2001年4月10日  TOP   

 

 漢字は表意文字で、一字一字が意味を持っており、基本的には一字は一語である。その点、英単語などと同じような性格がある。実際、漢字一字は英単語一つに相当するといっても過言ではない。

 「漢字の多画性」の所でも述べたように、アルファベットは一つ一つは構造が単純でも、それが基本的に複数組み合わされなければ、意味のある単語にはならず、そういう単語の構造は、やはり漢字に負けぬくらい複雑であると言える。

 そして、漢字も英単語も基本的に、どちらも無限に増殖する可能性を含みながら、英語の常用単語数1万以上に対し、漢字はせいぜい三千から六千。もちろん、両者の単純な比較は出来ないかもしれないが、この数字の差は漢字と英単語との構造の違いによるものであると言える。

 例えば、英単語の場合、新事物に「名前」を付ける場合、たとえ従来の単語を組み合わせた複合語を作るにしろ、これによってどんどん単語量が増えていくのに対し、漢字の場合だと、既存の文字を複数組み合わせる、つまり熟語を作ることによって、この問題を解決できるのであり、新事物の出現によって、やたらと漢字が増殖していく必要はないのである。漢字の常用字数が比較的少なくてすむのは、この漢字の特性によるものだろう。

 

4.漢字は難しいか?(4) 日中漢字数比較 2001年4月9日  TOP   

 

 ものごとというものは、80%でよしとするなら、比較的少ない努力で可能である。努力を多くすれば、95%の達成も困難ではないが、100%の完成というのは、その後、数倍の努力を重ねても、なかなか実現できない、という。

 漢字にも同じことが言え、最低ラインの千字ができれば、まあまあの所まで読み書きできる。次の目安が二千字であり、日本では高校卒業段階、中国でも中国共産党機関誌『人民日報』は二千字の範囲で書かれているという。

 中国には仮名がないのだから、日本より多くの漢字が必要なはずだという思い込みをしている人がいるようだが、これは日中両言語の相違を理解していないものである。中国語を読んでいても、固有名詞をのぞいては、字体が違うだけで、そんなに漢字の種類が多いとは思えない。よく言われる外国名詞の音訳にしても、例えば「布什」=ブッシュ、「米洛舎維奇」=ミロシェヴィッチのように、まあ一般的な漢字が当てはめられている。

 

3.漢字は難しいか?(3) 漢字の多字性・続 2001年4月9日  TOP   

 

 「漢字の常用字五千」という件については、やはり補足が必要である。これは日本の著名な中国文学者・吉川孝次郎1904〜1980)が、その著書で述べたところであり、五千というのは厳密には漢文(中国の古文)の常用字数であり、五千文字を知っているというのは、かなり古典に明るい学者であり、現代文の常用字数は実際はもっと少ないのではないか。 

 ちなみに日本文部科学省認定の「漢検」(漢字能力検定)では、漢検一級を取るには、JIS第一及び第二水準の約六千字の習得が要求されているが、これはかなり難しい。現在の平均的な高校国語教師でも「漢検一級」は取れない。ちなみに「漢検」の準一級は約三千字、二級は1945字の常用漢字である。「常用漢字」は、高校卒業時までには習得しているものとされている漢字であり、実際は、現代社会においては、特に中国古典の学者でもない限りは、二千から三千も知っておれば上等であろう。なお、最低ラインはというと、義務教育段階で教える教育漢字1006字であり、日本の一般新聞は、この範囲内で書かれている。

 

2.漢字は難しいか?(2) 漢字の多字性 2001年4月8日  TOP   

 

 漢字はアルファベット26文字や仮名50音に比べると、非常に字数が多い。可能性として、漢字は無限に「創作」することが出来る。ちなみに、日本最大の諸橋『大漢和辞典』などは約四万九千の漢字を収めるが、実際はそれ以上であろう。

 しかし、常用される漢字はせいぜい五千であり、そんな数万ものに漢字は実際には使われない。五千と言うと、非常に多いように思われるかもしれないが、それでも英語の常用語数一万以上のせいぜい半分である。

 

1.漢字は難しいか?(1) 漢字の多画性 2001年4月7日  TOP   

 

 漢字は筆画が多いから、書くのが難しいという。確かに、アルファベットや仮名などと比べると、漢字の字形は複雑で、書くのが難しく、覚えるのが大変である。

 しかし、表音文字たるアルファベットは漢字と違って、一字一字は音を示すだけで、単独では意味をなさない。アルファベットで意味を示すためには、これをいくつか連結して、単語を作らねばならない。例えば、漢字なら「山」一字で住むところを、「mountain」と八文字も必要である。学生時代、英単語を覚えるのに苦労された人も多いと思うが、この英単語などのスペリング(綴り)を覚えるのも、漢字を覚えるぐらい大変であろう。

 漢字のみの中国語と同様、アルファベットのみの英語なども、たとえその言葉を知っていても正確に書けるとは限らないのである。

 すると、発音したとおりに、そのまま書ける日本語の仮名が非常に便利なように見えるが、漢字を混ぜない仮名だけの文章などというものは読めたものではない。